
相続分とは、各相続人が相続財産全体に対してもつ権利義務割合をいい、指定相続分と法定相続分の2種類があります。まず、被相続人が遺言で指定した相続分(指定相続分)がある場合は、それに従い、遺言での指定がない場合にはじめて民法の定める相続分(法定相続分)に従います。なお、遺言で遺留分を超える相続分を指定しても有効です。
■ 遺言で相続分の指定を第三者に委託した場合
相続分の指定を第三者に委託することもできます。この第三者への委託は生前にすることはできず、遺言に委託する旨を書かなければなりません。被相続人の死亡後、第三者が相続分の指定をしたときは、指定の効力が相続開始時にさかのぼって生じます。
■ 遺言で債務の相続分を指定した場合
法定相続分とは異なる債務の相続分を遺言で指定しても、相続人はそれをもって債権者に対抗することはできません。債権者は法定相続分の割合によって、相続人に対して請求できます。例えば、借金2000万円を残して夫が死亡し、妻と子1人が相続人となる場合において、「妻が債務のすべてを負担する」という遺言を書いたとしても、債権者は子に対して法定相続分である2分の1(1000万円)の返済を請求できます。
■ 分割前に相続人が相続分を譲渡した場合
共同相続人の1人が遺産分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を取り戻すことができます。この権利を相続分取戻権といいます。相続分取戻権の行使は1ヵ月以内にしなければなりません。
なお、「相続分の譲渡」と「共有持分の譲渡」とは異なりますので、注意が必要です。相続人の一人が共有持分を譲渡した場合、他の相続人は取戻権を行使できません。例えば、子3人が相続人となり、相続人の一人が遺産である土地の共有持分(3分の1)を譲渡した場合、他の相続人は、その持分を取り戻すことはできません。

■ 法定相続分
法定相続分は以下のとおりです。配偶者は常に相続人となります。
なお、法定相続分と異なる遺言も遺産分割協議も有効です。
・子と配偶子が相続人であるとき
配偶者 2分の1 子 2分の1
子が数人いる場合は2分の1を均分します。非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1です。 代襲相続人の相続分は被代襲者と同じです。実子と養子の相続分は同じです。
・直系尊属と配偶者が相続人であるとき
配偶者 3分の2 直系尊属 3分の1
直系尊属が数人いる場合は3分の1を均分します。直系尊属とは、親などをいいます。実親と養親の相続分は同じです。
・兄弟姉妹と配偶者が相続人であるとき
配偶者 4分の3 兄弟姉妹 4分の1
兄弟姉妹が数人いる場合は4分の1を均分します。被相続人と父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹は、父母の双方同じくする兄弟の相続分の2分の1です。
兄弟姉妹には代襲相続はありますが、再代襲相続は認められていませんので、兄弟姉妹の孫は相続できません。

<具体例・子と配偶子が相続人であるとき>
夫(被相続人)が死亡し、妻A、妻との子B、妻の連れ子C、及び、夫の愛人D、愛人との子Eがいる。さらに、夫は40年前に離婚しており、先妻との子F(親権は先妻にある)がいる場合の各人の相続分は?
相続人になれるのは、A、B、E、Fです。
夫と妻の連れ子の間には親子関係がありませんので、Cは相続人になることができません。
また、離婚すると夫婦の関係はなくなりますが、親子関係は切れませんので、子の親権が先妻にあり、何十年も音信不通でも、子であることには変わりありませんので、Fは夫の子(嫡出子)であり、相続人です。
妻 A:1/2
嫡出子 B:1/2 × 2/5=2/10 F:1/2 × 2/5=2/10
非嫡出子 E:1/2 × 1/5=1/10

<具体例・直系尊属と配偶者が相続人であるとき>
夫(被相続人)が死亡し、妻A、妻の母B、夫の実親C、夫の養親D・Eがいる場合の各人の相続分は?ただし、夫の子など直系卑属はいないものとする。
相続人になれるのは、A、C、D、Eです。
妻の母は夫の親ではありませんので、Bは相続人になることができません。
実親Cと養親D・Eの相続分は同じです。
妻 A:2/3
実親 C:1/3 × 1/3=1/9
養親 D:1/3 × 1/3=1/9 E:1/3 × 1/3=1/9

<具体例・兄弟姉妹と配偶者が相続人であるとき>
夫(被相続人)が死亡し、妻A、夫の兄C、弟D(すでに死亡している)の孫Eがいる場合の各人の相続分は?ただし、子などの直系卑属及びその他の親族はいないものとする。
相続人になれるのは、A、Cです。
兄弟姉妹の代襲は子に限られますので、兄弟姉妹の孫は相続人ではありません(再代襲相続なし)。
妻 A:3/4
兄弟姉妹 C:1/4

■ 特別受益者
共同相続人が被相続人から、遺贈を受け、または「婚姻、養子縁組のためもしくは生計の資本として」贈与を受けていたとき、相続財産の前渡しとみなされて、その受益分を相続分から控除します。この控除を特別受益の持戻しといいます。
■ 特別受益がある場合の相続分の計算
(相続時の財産価額)+(特別受益に当たる贈与額)-(寄与分)=(みなし相続財産)
(みなし相続財産)×(各人の法定相続分)=(具体的相続分額)
(具体的相続分額)-(特別受益の額)+(寄与分)=(各相続人の実際の相続分)
この計算により実際の相続分がゼロになった場合、配当を受けられません。
一方で、マイナスになっても特別受益者は返還する必要はありません。
<具体例>
相続開始時の遺産が600万円で、相続人は子A、Bのみであり、Bが100万円(相続時の評価)の特別受益に当たる贈与を受けていた場合
600万円+100万円=700万円(みなし相続財産)
700万円×2分の1=350万円(具体的相続分額)
Aの実際の相続分:350万円
Bの実際の相続分:350万円-100万円(特別受益分)=250万円
■ 特別受益の持戻しの免除
生前または遺言で被相続人が特別受益の持戻し免除の意思表示をしたときは、遺留分に反しない限り、その効力が認められます。
上記の例で、持戻し免除の意思表示があった場合、相続財産600万円を均分し、A:300万円、B:300万円となります。

特別受益の対象となるのは、①遺贈された財産、②「婚姻、養子縁組のためもしくは生計の資本として」贈与を受けた財産です。
① 遺贈を受けた財産
遺贈とありますが、遺言によって相続人が相続を受けた場合も含みます。
② 「婚姻、養子縁組のためもしくは生計の資本として」贈与を受けた財産
どのような場合に、特別受益となるのか一律に決めることはできません。判断基準は、 遺産の前渡しの性格を持っているのか否か、社会的儀礼や愛情としての性格を持っているのか否か、のようです。遺産の前渡しと判断されれば特別受益があったものとみても良いのですが、実際、簡単には判断しづらいことが多いのです。被相続人の社会的地位、資産や収入、贈与を受けた当時の社会通念などを考慮して判断します。以下、特別受益にあたるか、考えてみましょう。
● 挙式の費用・婚姻資金
挙式の費用への贈与は、挙式を行うと消滅するので、相続人の財産になるということはできず、特別受益ではありません。支度品についても、被相続人の資産状況等によっても異なりますが、社会的儀礼に基づくものであれば、特別受益とはなりません。
● 大学資金
大学の入学資金や生活費について、以前は「生計の資本」として特別受益にあたるとされていたようです。しかし、最近は高学歴化にともなって、大学や専門学校等に入学する割合が非常に高くなっていますので、通常は、遺産の前渡しということは考えにくく、特別受益にはあたらないでしょう。私立の医科大や法科大学院、長期の海外留学の場合は、被相続人の資産等から判断しても、多額の贈与になるケースがありますので、特別受益にあたるかどうかの判断は慎重にしなければなりません。
● 開業・営業資金援助
遺産の前渡しとしての性格が強いですので、特別受益となるでしょう。
● 土地・建物の贈与、またはその取得のための援助
土地や建物は高額になることが多く、通常、特別受益と判断されるでしょう。
● 生活費の援助
子に収入がほとんどなく、子1人の収入では暮らしていけない状態にある場合での生活資金援助は、親の子に対する扶養義務の履行にすぎず、特別受益とはいえません。しかし、大学も卒業し、生活は苦しいけれども、それなりの収入を得ているにもかかわらず、自分の子どもの教育資金を親に出してもらっているような場合は、遺産の前渡しと判断される可能性があります。

■ 寄与分
相続分が増える制度が、寄与分です。相続分は同一順位であれば相続分は均等ですが、財産の維持・増加に非常に寄与した法定相続人(被相続人の商売に無給的労務の提供、財産上の支払い、被相続人への献身的療養看護など)は、相続分にプラスのボーナス(寄与分)が上乗せされて、もらえます。法律上当然の義務である通常の家事労働や、親や配偶者の通常看護に対しての寄与分は認められません。また、寄与分は相続人にのみ認められ、相続人でない者に対しては認められません。
寄与分は、まず、相続人全員の話し会いによって決めます。次に、その話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所へ審判の申立てをします。
寄与分が認められた場合の相続分の算出方法は、はじめに相続財産の総額から寄与分を差し引き、それをベースに法定相続分の割合に応じて、各相続人に分配します。その配分額に寄与分をプラスしたものを寄与者は受け取ります。
(相続時の財産価額)+(特別受益に当たる贈与額)-(寄与分)=(みなし相続財産)
(みなし相続財産)×(各人の法定相続分)=(具体的相続分額)
(具体的相続分額)-(特別受益の額)+(寄与分)=(各相続人の実際の相続分)
<具体例>
相続開始時の相続財産が600万円で、相続人は子A、Bのみであり、Bに100万円の寄与分が認められた場合
600万円-100万円=500万円(みなし相続財産)
500万円×2分の1=250万円(具体的相続分額)
Aの実際の相続分:250万円
Bの実際の相続分:250万円+100万円(寄与分)=350万